母は絶対的な存在だ。
何か心配事があって母に相談すると、
「大丈夫」
という答えが返ってくる。そして物事は大抵大丈夫だ。
彼女に物事を「大丈夫」にする力があるというよりも、母としてのパワーが万物を押し切って「大丈夫」にしてしまう。それとも、私が母に大丈夫と言われたことで、大丈夫な道に自ずと進めるという方が正しいか。
そんな母も歳をとる。
目が見えづらくなる。
できなくなったことが増えた。
会うたびに小さくなる。
守っていた立場から、守られる存在になった。
自分でも驚くのが、そんな母の変化に淡々としていられること。できなくなったことは残念だけど、お互い受け入れようね。受け入れて、新たな楽しみを見つけるのも楽しいし、少し工夫することで妥協しなくてもいいかもしれないよ。
強い母。
正義感が強く、どんな相手でも自分の意見を言える母。
涙もろく、映画やドラマを観てすぐ泣いてしまう。
実は気が小さいというのを知ったのは、たった数年前。
お出かけ前に、鏡の前であれやこれや
服を引っ張り出し、新物も並べ
また買ってしまったんよ。これとこれは合うかね?
あわてて
はしゃいで
ああ、母は何も変わっていないね。
どんな状態になっても母を連れ出そう。
彼女の好きな服を着て。