リソグラフって何? – 中野活版印刷店に聞いてみた

「これ、面白いな」という本は、けっこう全国で流通しているのよりも、特注の印刷だとか製本をしているものだった。小規模精鋭。この前、買った本の奥付を見て知った中野活版印刷店は、リソグラフ(シルクスクリーン印刷)活版印刷サービスを扱っているらしい。「名刺」「ショップカード」「コースター」「マッチ」など小ロットでの印刷物もろもろ。早速、訪ねてみる。

中野活版印刷店の店頭。印刷道具などが窓越しに見える。
お店の名刺/活版印刷

土曜日の昼下がり、京王線と中央線を乗り継いで荻窪まで。目の前まで行ったらシャッターがしまっていた。事前に連絡した時、お昼休みに一時的に閉めることがあるというのは聞いていたけど、少し不安がよぎる。その直後、昼ごはんから帰って来たらしいお店の人が扉を開いた。この時間の流れ方、なんだか懐かしい感じがする。

2011年の絵本原画展のフライヤー/コーヒーフィルターに活版印刷

活版印刷は以前にも広島で、絵本原画展「らいおんのうた -Lion’s Song- 」のフライヤーを刷った時に利用したことがあるけど、リソグラフについてはほとんど知らない。つい1ヶ月ほど前、シカゴにいる友達が中古のリソグラフをスタジオ用に購入し使っているというのを聞いて、興味は持っていた。

店主の中野さんがAからZまでリソグラフのこと、印刷全般についてデザインから用紙選びまで丁寧に教えてくれる。「初めてだとわからないことだらけ。やっているうちに質問が出てくると思うんで、何でも聞いてください」とのこと。非常に心強い。お店が過去に手がけた本を参考に見せてくれ、そのうち何冊かは美篶堂、製本のもの。10年前に実験的な手製本を繰り返していた時期、いつか絵本を出版するときはこの製本会社でと考えていた。夢は広がる。

リソグラフの印刷見本。色と用紙の組み合わせは、ほぼ無限。
活版印刷の組み版など、きれいに整理されている。

まずはハガキサイズのポストカードを印刷したみたいと思っていたけど、サンプルを見せてもらうと、大きさもデザインも様々。リソグラフを使ってどんなカードにするか、また悩ましくもわくわくする日々が続きそう。

ちから

アフターコロナの理想郷

2020春コロナ禍のあとにやってくる世界のこと。働き方のあり方、家族や友人との過ごし方、そして僕自身はどうなるんだろう。日本では緊急事態宣言が解除されて、新しいフェーズに入った。コロナなんてもう終わったという人も増えている。世界に聞き耳をたてるとニュースや知り合いを通して、バラバラな情報が入ってくる。インフォデミックなんていうのもある今、時代や社会というワードもぼんやり感じる。

右往左往しながら、それぞれの正しさを信じて、疑って、生活を組み立てる。変化することとしないことがある中で、こんな世界になったらという想像力は今こそモノを言うんだと思う。意識は同じルーティーンを回っているようでも、引力のように自分の信じたいものに引き寄せられる。日々の暮らしを重ねるごとに、軌道修正されて目的地に向かう宇宙船のように。

画家ゴーギャンの有名な言葉で、「我々はどこから来たのか? 我々は何者なのか? 我々はどこへ行くのか?」というのがある。今こそ感じていること、経験していることを誰かとシェアしたい。

View this post on Instagram

Mokumoku Studio @mokumoku.studio

A post shared by Rescue Party (@rescueparty2020) on

少し前置きが長くなったけど、ブルックリンのDesert Island書店のプロジェクト「Rescue Party 2020」に参加。9つのカードでアフターコロナの理想郷をアーティストが表現するというもの。僕なりに思い描いたユートピアを9つのワードと絵で表現してみた。

after corona
英訳/掛田智子

知りたいのは答えじゃない
増やすのはお金じゃない
交わすのは取引じゃない
作るのは捨てるためじゃない
眠るのは疲れたからじゃない
望むのは手に入れたいからじゃない
生きるのは死なないためじゃない
愛するのは嫌われないためじゃない
私でいることに理由はいらない

選ばれた作品はまとめられ、印刷されて出版されるとのこと。Desert Island書店はコロナ禍の影響もあるのか、経営状況は厳しいらしい。人々の生活が根っこの部分から変わろうとしているけど、文化的なことは後回しにされがち。その中でのこういう試みに、期待と応援をしたい。そしてリスペクト。

ちから

パンデミックからのポストカード

2020新型コロナウイルス感染拡大。様々な自粛の日々をポストカードにしていくプロジェクト「Postcards From Pandemics」に参加しました。作品は1枚ずつ印刷されアップ。他の作品を見るのも面白い。

世界がざわざわしている自分

大きな出来事があって日々あたりまえに暮らしてきたことが変化する
世界中がそれに遭遇している
戦争が起きたら道路や家が破壊されて物理的に分断される
でもこれはそんなふうじゃない

たくさんのものを食べたり楽しんだり買ったりしていた
仕事をして電車に乗って人と会って
そういうことのつながりが絶たれた
そうした特別な時間の中で気づきがある

ネガティブもポジティブもいろいろ
それは一人一人違うもの
この大きな出来事を経た後
また元の日常に戻るのか
気づきを元に違う日常になるのかは個人によって違う

ちから